雨の日によみがえるロンドンの思い出


例年より早く梅雨入りして今もシトシト雨が降っているけれど、こんな静かな雨の日は決まってイギリスを思い出す。これは帰国してからずっとそうで、今日もその記憶が思い起こされた。

2年前の誕生日に友人からもらった紫陽花。 植え替えたら増えてきた!

留学していたのが1996-1998年にかけてだったのでもう20年以上前(!)なのになあ、と自分でも不思議。それほどイギリスは雨が多かったのもあるし(でもザザ降りはほぼない)、海外に住んだときの独特の寂しさとリンクしているからかもしれない。

思い出すのは、いつもダブルデッカーの2階から知らない町を眺めている自分。

見覚えのないエリアへどんどんバスが進んで行って心細くなった日のことで、雨が静かに降るどんよりとした夕方だった。たぶんロンドンに住み始めて間もない頃で、自分が住むエリア行きのバスとは違う番号のバスに乗ってしまったのだろう。

どうしていいかわからないうちに、バスは丘の上の見たことのない(たぶんZone 4くらいの)寂れた町を進み、「どどどどうしよう」となすすべもなく揺られながら、心の底から孤独を感じた。それは今まで味わったことのない究極の孤独感だった。

英語に自信がなくて人見知り気味だった私は誰かに聞くこともできず、でも「このまま乗ってるとまずい」ことだけはわかったので、途中でえいやっとお金を払って降りた。そのあとどうやって住む町まで帰ったのかあまり覚えていない。

たぶん歩くうちに正しい番号のバスを無事に見つけて乗ったのだと思う。

20年以上が経って、あの究極の心細さになることは今ではほぼない。スマホもあるし、経験も積んだ。でもこんな雨の日に、あの赤い二階建てバスで無表情のイギリス人たちに囲まれながら、心細さでいっぱいになっていた自分をなぜか思い出す。

見たことのないニューススタンドや家が立ち並び、郊外へ進むにつれて人も少なくなってこのまま帰れなくなるのではと泣きそうになった不安な気持ちが、今も鮮明によみがえってせつなくなるのだ。そして直後に、あ、今の私はもうあんな気分にはならないだろうな、と自分や周りの恵まれた環境を振り返って少しほっとする。

アメリカやカナダやオーストラリアだったら、この痛いほどの孤独感は感じなかったかもしれない。そういう意味ではとても貴重な経験だった。ありがとうイギリス。

留学はしんどいことの方が多いから手放しでおすすめはしないけど、迷っているならやった方がいい。できれば2年以上。語学面だけじゃなく、日本では得ることのできない人間的強さが身につく。そしてその強さは自分の根っこになって人生を支えてくれる気がする。

あと単純にロンドンには雨が似合う。もうこれは絶対。

しばらく雨の日が続きそうなので、ロンドンとかつてのよわよわだった自分をなつかしく思い出しながら、しっとりした気分に浸りたい。

Kana

ジャングル化してきた家の庭も雨が似合う
紫陽花の横にはイチゴミルクという名のチェリーセージ。名前もかわいい。

 


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