どうやって立ち直ろう?と思ったときに力をくれた言葉


先週、久々の研究会での論文報告が終わってほっとした。ので、ずっと書きたかったテーマでブログを書いてみる。
報告発表した論文はちょうど去年の今頃(2020年夏)に書いていた。
この時期、私は心身ともにダメージからの回復途中で、半分死にながら書いていたなあ、と思い出す。

でも論文執筆という大きなタスクがあったからこそ、余計なことを考えずに集中できてとてもよかったのだ。
いやむしろ、集中できるタスクがあってありがたかった。
論文を書くこと自体は大変だったけど、早起きして集中して書いて直してまた書いて、という行為は、確実に回復の助けになったからだ。

そして、そのきつかった時期に私を救った本からの言葉がたくさんあった。

何らかの理由で苦しくてつらい気持ちを抱えている人に役立てばいいなあ、という思いと、自分でまた揺り戻し(定期的にくる)がきてしんどくなったときに読み返したい、という2つの理由から、書き留めておく。

ひとつめは吉本ばななさんの言葉。

このダイアリーの装丁は見てるだけで気分があがる

去年(2020年)の12月に、吉本ばななさんのトークショーがオンラインで開催された。運よくダイアリー付きのチケットをゲットできて質問も募集されていたので(どうせ採用されないけどな、と思いながら)書いて送ってみたら、トークショーでばななさんが答えてくれたのだ!ものすごくうれしかった。

送った質問は「ショッキングなことが起こったとき、時間が経っても思い出してつらくなる。こういうときはどうしたらいいのか、ばななさんはどう乗り切っているのか?」みたいな内容だった。まさか読まれるとは思わず具体的には書けなかったことを後悔した。ばななさんは、「具体的に書いてないから答えにくいんだけど~」と前置きして、こう続けられた。

まず「思い出してもしょうがないよな」って自分をゆるすこと。「あー、また思い出しちゃった。豚汁でも食べるか」みたいな。
あなたは「そんな軽い感じで言ってくれちゃって、私がどれだけつらい思いをしてるか知らないくせに」って思うかもしれないけど、誰もが人に言えないほどつらいことを抱えている。私もこれはとても書けないなって思うほどのことがたくさんあった。そういうもの。「そこそこで」「まあまあで」「てきとうで」という言葉を抱いていると足が軽く動くから、そうやってその日その日をしのいでいくといい。

ばななさんの言葉をとにかく聴きながら紙にバーッとメモした。
当たり前だけど自分だけじゃないんだな、という思いと、著名な小説家としてこれまでいろいろあったであろうばななさんの生の言葉がとても心に響いた。

質問が選ばれたのもご褒美的な気がして、「あの大変な2020年はこの時間のためにあったのだ…!」と思えた。

次はこの2冊から。

『「普通がいい」という病〜「自分を取りもどす」10講』(泉谷 閑示)

『空海のこころの原風景:自身の内なる仏への旅』(村上 保壽)

どちらも付箋だらけ

精神科医の泉谷先生による『「普通」がいいという病」は付箋だらけで自分でも引くほど、何回も読み返している。その中でも毎回グサグサ刺さる言葉を抜粋してみる。(ちなみにこれはブックライター江角悠子さんのブログで紹介されていて知った本)

「心」=「身体」を自然や宇宙とつながったものと捉えましたが、私はそれを「信じる」ことが「自信」なのではないかと考えます。

底がぬけて自然とつながっているような無限に開かれた自分ならば、「信じる」こともすんなり出来るのではないでしょうか。

自分を信じるって難しい。「自分を信じろ」とか「自信を持て」と言われてもなかなかできない。でも、自然とつながった大いなる自分を信じてみることが「自信」につながる、という考えは心にスッと入ってきて「あ、できそう」と思った。

とにかく頭(意識)に心と身体を支配させない、心と身体の大いなる力と深い知恵にまかせる。一番えらい社長は心と身体で、頭はそれを支える秘書として使うもの、という考えにはっとさせられた。出会えて本当によかった一冊。

2冊目は空海の本。ずっと空海の本が読みたくて、でもどれがいいのかありすぎてさっぱりわからず悩んでいた。たまたま日帰りで高野山に行ったときに立ち寄った地元の本屋でこの本が目に入って、小さめだし読みやすそう、と思って買ってみたらとてもよかった。

心に残った言葉は「開き直った不動のこころ」。

開き直る、というと自己中心的なイメージを持ってしまいがちだけど、ここでは「自分を捨てることのできる関係の取り方や距離感」だという。
これって最強の状態じゃないだろうか。

何か物事が起こったとき、自分のコントロールできることは意外と少ない。じたばたしてもしょうがない、と腹を括ったとたんに物事が自然にあるべきところへ流れていく。これは40年以上生きてきた人なら経験としてなんとなく感じたことがあると思う。
でも腹を括ることはいつでもこわい。そんなときに、でもやるのだ、やる価値がある、と励ましてくれる言葉だ。

開き直ることによって揺るがなくなり、フラットな状態になる。自分が消える。周りのごちゃごちゃに影響されなくなる。まさに理想の状態。
こんな風に生きたいなあ、と周りのノイズや自分の頭に影響されまくりの私は、ここでも付箋を貼りまくった。

最後は、Shri Kali Yogaの師匠バガヴァンによるオンラインレクチャーでの言葉。

“Past is invalid. Future is now.”
(過去は無効だ。未来は今にある。)

リスニング力を鍛えなおす時間でもあった

バガヴァンのレクチャーは本当に濃くて熱量が半端なかった。このほかにもズキューンとなる言葉がいっぱいだったが、特にこの言葉を聞いたときは思いがけず目からみるみる涙があふれた。

英語のシンプルさにも救われたのかもしれない。
バガヴァンはインドの人だけど流ちょうな英語でどんどん話す。ネイティブレベルながら深い言葉がシンプルに表現されていて、また気持ちがこもっているので響くのだ。

こんな風に英語を話すべきだなあ、と自分を振り返って思ったし、教えるときの参考にもなった。
言いたいことがあふれている人の英語は、アクセントが強かったり言い回しがネイティブぽくなくたって、十分伝わる。それどころか、小難しい言い回しを使ったネイティブの言葉よりも心をつかまれる。

日本人ぽい英語だとしても、言いたいことがしっかりしていれば自信を持って話していい。
しんどいときに私を救ってくれた言葉は、そのまま英語学習にも活かされるな、と書きながら気づいた。すごい。
やっぱり普遍的な真実はすべてに共通していると実感した。

英語では「博士課程」をPh.D.(Doctor of Philosophy)と表すように、すべての学問は突き詰めれば哲学(Philosophy)に到達する。
英語も小手先のスキルだけじゃなく、「生きる力につながるように」と思いながら教えていきたい。
大げさだけど、そのくらいの祈る気持ちで目の前の生徒さんや学生に接していこうと思う。

Kana


Leave a Comment