弓道から生き方を学ぶ


今年の4月から弓道を習い始めた。 

ずっとやりたくて、憧れ続けて40年。(えっ、そんなに…と自分で書いててちょっと引いた)
きっかけはミーハーで恥ずかしいけど書く。小学生の時に見た角川映画「時をかける少女」(1983年の映画。大林宣彦監督の尾道三部作
)である。原田知世演じる主人公が弓道部だった。グラウンドで他のクラブの練習に交じって弓を引くシーンが凛としてかっこよくて、忘れられなかった。

(ちなみに当時、別の角川映画「愛情物語」での原田知世の髪型にも憧れて、友達のお母さんが経営する地元のパーマ屋さんに行って「おばちゃん、この髪型にして!」と頼んで困らせた。そして当然ながら思っていた髪型にはならなかった苦い思い出がある)

映画館を後にしてすぐ「中学生なったら弓道部に入る!」と固く心に誓ったものの、入った中学校に弓道部はなくてがっかりした。進学した高校にも大学にも弓道部はなかった。

数年前にまた「弓道やりたい熱」が高まって探したときは私が住む和歌山市内では見つからず、南部の田辺市にはあったけど高速で1時間以上かかるので通えないな、とあきらめていた。

それが今年になって、うちから車で20分ほどのところにある体育館でお稽古をしていることがわかったのだ!
はやる気持ちと緊張を抑えながら見学したのは4月の晴れた日。
道場は半分屋外になっていてとても気持ちよかった。

畑や田んぼに囲まれた道場の戸をくぐると緑の景色がぱあっと開けた。
その先に的が並び、弓を射る先輩方の後ろ姿とのコントラストが本当に美しい。ここで習いたい!と瞬間的に思った。

床面に空が反射してスピーチレス

特に代表の女性の先生がめちゃくちゃかっこいい。
厳しいけれど芯があって、指導されていて背筋が伸びる。しゃべり方がなんとなく桃井かおり(昔から好き)ぽくてそれもまた素敵。

その先生に思いがけずマンツーマンでお稽古を見てもらったとき、弓を持つとなかなか姿勢を保てない私に「他のことは関係ない!自分の中心にだけ集中するの!」とびしっと言われた。
その瞬間、なんだかわからないけど人生に置き換えてじわっっとなった。見つめる的が涙で滲む。泣きそうになる気持ちをあわててこらえた。
こんな風に、弓道を始めてみるとあらためて「道」と名のつくものは人生をよく生きるためのお稽古なんだな、と実感する。

自分と弓矢と的だけ、という潔さもいい。的に当たらないのは自分が道具と一体になっていないから。すごくシンプル。だから自分の中心に軸がないと的には当たらない(し、届かない)。

ゴム弓で練習していたときは姿勢がきれいにキープされていても、弓矢を持つと崩れる、それは恐怖心だということが自分でもよくわかった。弓を思いっきり引いて中に入っていくのも怖いし、矢が落ちそう!と思うと知らず知らず手に力が入る。するととたんに身体の中心がズレて、落ちる矢の音が道場に響く。(恥ずかしい)

弓と矢を押さえる手は意外にも余裕を持たせるのがいいらしい。
ぎゅっと握りすぎても矢は飛ばない。えっ、こんな隙間があっていいの!と思うほどゆるく持つ。
ある部分はしっかり押さえなければならないけど、思った以上にゆるい。それはとってもこわくて、自分を信じないと引けない。でも信じてゆるめてぐっと引くと、うまく矢が飛ぶのだ。

自分をいかになくしてリラックスするか、を試されているような時間だなと思う。

一度、巻藁(まきわら)練習で少し姿勢に慣れてきたとき、余裕が出てきたのか「よし真ん中狙おう」と色気を出した途端、矢が頬をかすめて落ちた。こわかった。そしてしばらく当たった頬が痛かった。余計なことを考えると体にへんな力がかかるんだな、と身をもって実感した。

それからは的の中心はいったん忘れて自分の姿勢や力の入れ方に集中するようにしている。実際、弓道では的に当たるかどうかが基本で、アーチェリーのように真ん中に当てるのが目的ではないという。(知らなかった)

とにかく所作や姿勢が大切な弓道。猫背気味で姿勢の悪さに定評のある私は、その面でも少し改善されるといいなと期待している。
姿勢の悪さも、もとは心から来ている気がするから。自分を信じて周りも信じられるようになると、自然と背筋が伸びる気がする。

弓道を始めて自分で(勝手に)学んだこと。

自然にうまく物事が進む(的に当たる)ためには、自我を消しつつ周り(弓矢)と自分を信じて、中心からぶれないこと。

すごく深い!!!と、お稽古を積むたびに感動している。

そんなわけで弓道にはまっているこの頃。
年齢や性別関係なく、みんなが和気あいあいと教え合っている雰囲気もとてもいい。
たまに武道でいがちなえらそうな親父とか(今のところ)皆無で、すばらしい環境。

でも土曜朝の英語レッスン(3連続)が終わったあとのお稽古なので、たまに「行くのめんどくさいな家でゆっくりしたい」と思ってしまう。
けど、そんな自分に打ち勝ってお稽古に行くと必ず心と身体がリフレッシュされて「行ってよかった!」となる。

人に教えてもらうのも久しぶりで、教える立場としては学ぶことが多い。やっぱりほめるの大事だな!とか、ダメ出しばっかだとやる気なくすな~とか、生徒さん側の気持ちになれる。

昨日から本格的に的前(まとまえ)で矢を射る練習が始まったが、所作の手順が覚えられなくて脳の老化を実感している(悲しい)。YouTubeの動画をあさって復習しよう。

当面の目標は袴をつけてマイ道具を持てるようになるまで上達すること!
マイペースでがんばりたい。

Kana


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